メールで届いた請求書、印刷して保存していませんか|売上5,000万円以下なら規程1枚で足ります

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取引先からメールで請求書のPDFが届いたとき、それを印刷してファイルに綴じていませんか。
その保存方法は、要件を満たしていません。 電子で受け取ったものは、電子のまま保存する必要があります。
うちはタレント事務所を11年やっていて、社員3人で所属80名を回しています。人を増やせないので実務をAIに寄せてきました。その過程で領収書のデータ化は終わりましたが、請求書の受け取りと支払いは別の問題でした。この記事は、そこで調べたことをまとめたものです。
電子で受け取ったものは、電子のまま保存する
国税庁の資料にはこう書かれています。
請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要
対象は申告所得税・法人税で帳簿書類の保存義務があるすべての事業者です。法人だけの話ではなく、個人事業主も含まれます。
つまり、こういうものが対象になります。
- メールに添付されたPDFの請求書
- 取引先の管理画面からダウンロードした請求書
- クラウドサービスから届く利用料の明細
紙で受け取ったものは、これまでどおり紙で保存して構いません。 対象になるのは、最初から電子で受け取ったものだけです。ここを混同すると、対応が必要以上に大きくなります。
メールの中に置いておくだけでは足りない
メール添付で受け取った場合、添付ファイルだけを保存すれば足ります。メール本文まで残す必要はありません。
ただし国税庁は、メールソフト上で閲覧できるだけでは不十分としています。受信トレイに残っているから大丈夫、という状態は要件を満たしません。
満たすべき要件は3つ
| # | 要件 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 改ざん防止の措置 | タイムスタンプ付与/履歴が残るシステムで授受・保存/事務処理規程を定めて守る のいずれか |
| 2 | 検索できること | 「日付・金額・取引先」で検索できる状態にする |
| 3 | 備付け | ディスプレイ・プリンタ等を用意しておく |
ここだけ読むと、システムを入れないと無理そうに見えます。実際、そう書かれた記事をよく見かけます。
ただ、資料を最後まで読むと、話が変わります。
小規模事業者には緩和があります
基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下なら、2の検索要件は不要です。
代わりに必要なのは、税務調査のときに**「ダウンロードの求め」に応じられる**状態にしておくことだけです。データを渡せればよく、形式や並び順は問われません。
この条件は、令和5年度の税制改正で1,000万円以下から5,000万円以下に拡大されています。対象になる事業者はかなり広いはずです。
そして1の改ざん防止も、事務処理規程を定めて守るという方法が認められています。国税庁がひな形を公開しているので、費用はかかりません。
結果として、やることは2つになります
- 電子で受け取った請求書を、決まった場所に保存する(あとから取り出せる形で)
- 事務処理規程を1枚作って、そのとおり運用する
売上5,000万円以下であれば、システムを入れなくてもここまでで足ります。
「電帳法対応にはシステムが必要」という説明は、売上規模の条件を外して話しているか、検索要件が必要な事業者を前提にしていることが多いです。まず自分がどちらに当てはまるかを確認した方が、余計な固定費を抱えずに済みます。
保存の形を決めるときに、ひとつだけ注意
うちは請求・支払い管理のアプリを自作していますが、その前にひとつ決めたことがあります。データを外に出せる状態にしておくことです。
保存場所をどこにするにせよ、あとからそこを離れられるかどうかは先に確認しておいた方がいいです。ツールが終わるより先に、中を触れる人がいなくなることの方が多いからです。
その話はデータを外に出せない仕組みは、いつか業務を止めるに書きました。
保存の要件を満たすことと、あとで動かせることは別の話です。要件だけを見て場所を決めると、数年後に取り出せなくなります。
うちの場合
やっていることは単純で、専用のフォルダを1つ作って、電子で受け取った請求書はそこに入れるだけです。
そのうえで、毎日フォルダの中身をリスト化する処理を自動で走らせています。 うちはClaudeにやらせていますが、ここは手段の話なので何でも構いません。重要なのは、フォルダに入れたものが一覧になって出てくることです。
支払いはそのリストを見ながら、支払期限に合わせて処理しています。
この形にした理由は、保存と支払いを別々に管理したくなかったからです。
- 保存のためだけにフォルダへ入れる
- 支払いのためだけに別の一覧を作る
これを分けると、片方が必ず更新されなくなります。 社員3人の会社では、二重に管理しているものは高い確率で放置されます。保存した瞬間に支払いの一覧にも載る形にすれば、更新漏れが起きません。
結果として、フォルダに入れるという1つの動作が、保存の要件と支払いの管理を同時に満たしています。新しく増えた作業は「決まったフォルダに入れる」だけです。
領収書のときも同じ考え方でした。溜めてから処理するのをやめて、その場でデータにする形に変えています(領収書を丸投げするのをやめたら月3万円減った)。
調べて分かった、うちの抜け
ここまで書いておいて何ですが、この記事を書くために調べていて、うちが要件を1つ満たしていないことに気づきました。
事務処理規程を作っていませんでした。
保存はできています。フォルダに入れて、一覧になって、支払いにも使えている。運用としては回っていました。 だから対応できているつもりでいました。
ですが要件1の改ざん防止は、タイムスタンプ・履歴が残るシステム・事務処理規程のいずれかです。フォルダに入れて一覧化することは、このどれにも当たりません。
保存の形を整えることと、改ざん防止の措置を取ることは別の話でした。運用が回っていることと、要件を満たしていることは違います。
規程は国税庁がひな形を公開していて、各種規程等のサンプルから Word 形式で落とせます。個人事業者向けのものもあります。費用はかかりません。
同じ状態の人は少なくないと思います。保存の方法だけ気にして、規程を見落とすパターンです。うちがそうでした。
支払いの側は、まだ整理できていません
受け取った請求書の保存はここまでで整理がつきました。ただし支払いそのものは別です。
うちは締めを月次にしています。仕入れも基本は月次なので、普段は困りません。問題は、月次に乗らない支払いです。
- イベントの会場費
- 初めての取引先で求められる前金
こうした支払いは、売上が入る前に出ていきます。入ってくるお金と出ていくお金のタイミングがずれるということです。金額が大きくないうちは自己資金で吸収できますが、出店数が増えるとこのずれは広がります。
ここをどう扱うかは、まだ答えが出ていません。整理がついたら書きます。
まとめ
- 電子で受け取った請求書は、印刷ではなくデータのまま保存する
- 対象は法人だけでなく個人事業主も含む
- 受信トレイに残っているだけでは要件を満たさない
- 基準期間の売上高が5,000万円以下なら、検索要件は不要
- 改ざん防止は事務処理規程を作って守る方法でよく、費用はかからない
- システムを入れる前に、自分がどの条件に当てはまるかを確認する
- 保存の形を整えても、規程がなければ要件は満たしていない。 うちがこれでした
※この記事は2026年9月2日時点で国税庁の資料を確認して書いています。制度は改正されることがあり、また個別の判断は事業の状況によって変わります。実際の対応は、国税庁の最新資料か、顧問の税理士にご確認ください。
参照した資料